オッサンズ・オブリージュ

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南アフリカ共和国の地域ブロック アラブ・マグレブ連合(AMU)の貿易構造-1

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アフリカの統一は1963年のアフリカ統一機構の段階で早くも目指されていましたが、

その目的は、欧米諸国の植民地主義への対抗としての協力・連携でした。

1994年の南アフリカ共和国の加盟をもって、モロッコ以外のすべてのアフリカ諸国が加盟します。

しかし組織は作られたものの、制度的な規定に留まり、実際の統合は一向に進展しませんでした。

そこでに1991年にアブジャ条約が締結されます。

このアブジャ条約では、最終的な目標として欧州連合(EU)に倣ってアフリカを共通経済圏に統合する目標が謳われ

これを機に統合の機運が高まります。

2002年には、アフリカ統一機構がアフリカ連合に再編されます。

アブジャ条約の発効以前から存在していた地域ブロックに補完的な新しい地域ブロックを加え、アフリカは経済統合に向けて本格的に動き始めたのです。


アフリカは、最終的な統合を前提に、8つ程の地域ブロックに分割されました。

そして、各ブロック内で自由貿易を進めていき、段階的にブロック同士の関税をなくし共通市場化ていくことで、

アフリカ全土の統合という最終目標を実現する見込みです。

最終的な統一を前提に分けられたアフリカの地域ブロックは、

・アフリカ北部に広がる「アラブ・マグレブ連合(AMU)」
・西海岸周辺を包む「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」
・南大西洋からアフリカ内陸部を含む「中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)」
・アフリカ東部に広がる「東南部アフリカ市場共同体(COMESA)」
・アフリカ南端の喜望峰を含む「南アフリカ関税同盟(SACU)」

の5つが該当します。

※東部と南部の地域ブロックには、複雑な内情を反映して加盟国の重複するブロックが並立しているのですが、以下の理由によりCOMESAとSACUを優先しました。

「南部アフリカ開発共同体(SADC)」は、経済統合を目的にした協定ですが、加盟国に別の地域ブロックと重複する国が多いため除外します。
「東アフリカ共同体(EAC)」は経済統合というより政治面の協力的な色合いが強いので、除外します。


今回は、アフリカ北部の地域ブロックである「アラブマグレブ連合(AMU)」の貿易構造を見ていきます。


アラブ・マグレブ連合(AMU)とは

2016年
総GDP 3441.4億ドル
総人口 9599万人

アラブ・マグレブ連合は、マグリブと呼ばれる北アフリカの5カ国の間で1989年に結成された経済協力機構です。

AMUには現在、アルジェリア、リビア、モーリタニア、モロッコ、チュニジアの5カ国が加盟しています。

アフリカの統一を目指して様々な施策が取られており

・AMU域内での自由貿易
・域外に対する共通関税
・共通市場(人、物、資本、サービスなどの移動の自由化)
・経済同盟(経済政策、法整備の調整)
・超国家機関の設置

の5つを段階的に推進しているようです。

域内貿易では、89年の設立から91年までの2年間で貿易額が約3倍の増加を見せるなど成果が見られる一方で、

西サハラ問題を巡るモロッコとアルジェリアの間の情勢不安(モロッコ・アルジェリア国境は1994年以降閉鎖されている)を始め、アルジェリアと加盟国の対立など、様々な意見の対立により地域共通機関の設立等、統合に向けた取り組みは停滞しています。
本格的なAMU諸国の会合も2008年以降、開かれていません。

しかしながら、世界的な地域統合の流れの中でAMUの統合が未解決のまま放置されるとは思えません。

そんなAMUの貿易構造について見ていきたいと思います。

※GDPのデータは2016年のものを採用


1 アルジェリア (GDP : 1607.8億ドル[世界第55位])

主要産業 : 石油・天然ガス関連産業
輸出 : 石油・天然ガス
輸入 : 資本財、半製品、食料品、消費財

国土の90%がサハラ砂漠に含まれるアルジェリアでは、約4000万の人口の9割が北部の地中海海岸地帯に住んでいます。

地下資源にも恵まれ、様々な鉱物資源が豊富に埋蔵されているものの、採掘は進んでいません。

農用地も肥沃なことで知られ、

青果(イチジク、ぶどう、野菜)、穀物(ライ麦、大麦、オート麦)、ワインや畜産物、羊毛、タバコ、オリーブなどが輸出されています。

しかしながら、やはりアルジェリアは資源依存国です。

石油・天然資源が輸出に占める割合はなんと98%と圧倒的です。

2016年の石油輸出量で世界第18位のアルジェリアですが、輸出構造は完全な資源依存に陥っているようです。

北アフリカでは、石油産出量1位であり、アフリカ全体の石油産出量でも第3位の172BPD(2013)です。(1位 : ナイジェリア [237BPD] )

貿易相手国を見ても、主要な輸出相手国がアメリカやEU圏の国で占められることからも、欧米諸国のエネルギー供給地の役割を担っているのでしょう。

輸入に関しては、食料品や衣類を含む消費財や資本財が取引されているようです。

なお、旧フランス植民地で莫大な対外債務を抱えているとされますが、貿易収支もマイナスを示すなど返済のめどは立っていないようです。


2 モロッコ (GDP : 1036.2億ドル[世界第60位])

主要産業 : 農業(麦類、ジャガイモ、トマト、オリーブ、柑橘類、メロン)、水産業(タコ、イカ、イワシ)、鉱業(リン鉱石)、工業(繊維、皮革製品、食品加工、自動車、自動車部品、電子部品、航空部品)、観光業
輸出 : 機械類(15.9%)、衣類(14.4%)、化学肥料(8.8%)、青果(7.9%)、魚介類(7.6%)
輸入 : 原油(12.0%)、繊維(11.9%)、電気機械(11.7%)

モロッコは、スペインの南方、アフリカ大陸の北西という位置と、外洋に面していることから貿易に有利な地理的条件を備えています。

また治安もアフリカ圏では比較的安定した状態で、特にカサブランカは国際都市として世界的に認知されています

以上のような優位性を生かして、モロッコは諸外国との自由貿易協定(FTA)に積極的です。

EU圏の企業からの生産プロセスの移転も盛んであり、自動車や縫製業、航空機会社などが進出しています。

自動車の組み立て業や食品加工、縫製業などの軽工業がバランス良く発達しており、輸出品目の主力を占めています。

EU諸国にとってのモロッコは、日本にとってのタイ・マレーシア、シンガポールのような存在かもしれません。

鉱業もアトラス山脈の断層地帯で盛んに採掘されており、農林水産業も盛んです。


3 チュニジア (GDP : 418.7億ドル[世界第87位])

主要産業 : 農業(小麦、大麦、柑橘類、オリーブ、なつめやし)、製造業・鉱工業(繊維、機械部品、電機部品、リン鉱石、食品加工)、サービス業(観光業、情報通信産業)
輸出 : 機械・電機機器(40.7%)、繊維・皮革製品(22.7%)、石油関連(13.2%)、その他の製造工業品(9.6%)、食料品・農産品(8.1%)
輸入 : 機械・電機機器(41.1%)、石油関連(17.5%)、その他の工業品(17.5%)、繊維・皮革製品(11.5%)、食料品・農産品(10.2%)


地中海に面した沿岸国の一つであり、EUとの貿易が盛んに行われています。

2014年は、輸出の77.2%、輸入の64.7%がEUとの間で行われ、EUとの間に自由貿易協定も結ばれています。

チュニジアの輸出産業は、製造業が中心とされ、機械・電子機器が全体の40.7%、繊維・皮革が22.7%を占めています。

輸入も機械部品や原材料・中間財が多く占めており、先進国企業の生産プロセスを担っている様子が伺えます。

また世界第46位の産油国であることから原油輸出も行われており、アトラス山脈を国土に含むため鉱物資源にも恵まれています。


4 リビア (GDP : 331.6億ドル[世界第95位])

主要産業 : 石油関連産業
輸出 : 石油等
輸入 : 自動車、電気製品、食料品など

リビアの石油埋蔵量は484億bblであり、アフリカ最大だとされます。(2位 : ナイジェリア [371億bbl]、3位 : アルジェリア [122億bbl] )

2014年の石油輸出量は世界第40位程度に過ぎませんが、貿易黒字を維持するための調整を行っています。

輸出の95%が石油関連だとされ、人口の4分の3が石油関連事業に従事しています。

また以前から皮革・繊維、金属細工などの軽工業は盛んでした。

油田発見後は石油収入を基盤に重工業などの産業育成が行われており、石油精製、製鉄、アルミ精錬などの産業が発達しています。


5 モーリタニア (GDP : [47.1億ドル世界第149位])

主要産業 : 農牧業(モロコシ、粟、米、牛、羊)
輸出 : 鉄鉱石、金、魚介類、原油
輸入 : 石油開発機器、石油製品、食料品

大西洋に面した国ですが、国民の貧困率の高さや政情不安のため、外資の誘致は進んでいないようです。

鉱業(鉄鉱石)と水産業への依存度が高く、産業の多様化が課題になっています。

労働人口の約半数が農業・牧畜業に従事していますが、生産性は低い。

2006年に海上油田を発見したものの、技術力の不足のため採掘は満足に進んでいません。

最近は、海上油田の採掘に向けて石油開発機器を輸入し始めているようです。

また食料のおよそ7割を輸入に頼っています。


さいごに

アラブ・マグレブ連合はアフリカ北部の地中海沿岸地域という位置条件のため、EU諸国との関係が強いように感じました。

モロッコとチュニジアは、EU企業の生産プロセスの委託国として扱われています。

豊かな産油国であるアルジェリアとリビアは、EU及び米国の原油供給地であり、アルジェリアは重債務に陥っています。

モーリタニアは、かつて別のブロックに所属していたこともあり、他の加盟国とは若干国の性格が異なるようでした。

知名度に比例して目立った資源も産業も持っていない国のようです。

ほとんどの国で財政赤字に陥っていることからも、独立したとはいえ欧米企業に都合よく使われている、

言い換えれば先進工業国に対する原料供給と生産プロセスの受け皿になること以外に外貨獲得手段を持たない国という印象を受けました。