オッサンズ・オブリージュ

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

中国にとって電気自動車普及の流れは追い風か?

1 各国の電気自動車の導入に積極的な発言は、ポジショントークでもある

中国やインド、ユーロ圏の国々が電気自動車の普及に向けた取り組みに積極的なのは、非産油国であることが大きく関係しています。

トランプ大統領の「地球温暖化などでっちあげ」という発言からも、アメリカは電気自動車の導入を進めているとはいえ、上記の国々と比べると、やや渋々感が否めません。

それはアメリカが原油輸出国であり、自然エネルギー利用の浸透が、エネルギー収益に直結するためだと考えられます。

一方、導入に最も積極的な国のひとつが中国です。

理由としては、世界最大の自動車市場として新市場のシェアを確保するため、あるいは急速な経済発展によって抱えた国内の汚染問題の解決のためでしょうか?

どうやらそれだけではないようです。

中国には、電気自動車に必要な「ある部品」に使われる主要な原料の産出国であることが関係しています。

それは、電気自動車のバッテリーに使われる「リチウムイオン電池」に他なりません。


このリチウムイオン電池は、エネルギー密度の高さ、高出力といった長所が評価されスマホやノートPCのバッテリーとして定着しています。


今後電気自動車が普及した場合、リチウムイオン電池の需要が増加するため、オーストラリアや中国、南米のアルゼンチンやチリといった国が経済恩恵を受けると予測されています。


2 リチウムイオン電池に強力なライバル出現。しかも日本からだと・・?


しかし2017年の7月に、業界のルールを一新しかねないある発表が日本のトヨタから発表されています。

それは、リチウムイオン電池の代替を狙う新しいバッテリー開発の報告であり、試作段階ではリチウムイオン電池の性能を上回るとされています。

そのリチウムイオン電池に代わるバッテリーとは、「全個体電池」です。


これまでの電池には、正極と負極を結ぶ電解質に液体が使われていましたが、新しい電池の画期的な点は、電解質に個体を用いる点です。

電解質が液体から個体に変わったことで、多くの問題が克服され、また性能が改良されました。

これまでは電解質が液体であるため、極端な低温・高温に晒されると、液体の電解質が影響を受け寿命が縮むという弱点を抱えていました。しかし、個体の電解質を採用することでこの問題も克服されます。

このバッテリーの劣化の問題は意外と重要です。

ユーザーが購入した電気自動車を売り出す際に、バッテリーの劣化が買い取り時のマイナスポイントとして評価され、売却代の購入時との差がガソリン車に比べて大きなものとなっていたのです。これがユーザーの不満の種となっていました。

ところが、電解質を個体にすることで、ユーザーはバッテリー劣化の不安から解放されます。
バッテリーが劣化しなければ、あとは車体が無事なら売却価格も購入時から大きな差はつきません。
ユーザーも価格低下を心配することなく電気自動車を購入できるようになるでしょう。

これまで電気自動車の普及を阻害していた要因が解決に向けて前進することになります。


またこれまでは、液体の電解質を気遣って、発熱と気化の原因となるような大量の電流を流すことは控えられていました。

しかし、電解質が個体なら電流を流しても電解質が気化することはないので、電池に向けて大量の電流を流せるようになります。

これにより高速充電、高出力の実装が可能になりました。

トヨタ自動車によると、「全個体電池」の実際の性能は、
エネルギー密度ではリチウムイオン電池の2倍、出力密度は同3倍以上となるとの試算が報告されています。

この電池をEVに搭載すれば、電池を約3分で充電できる可能性も出てくるそうです。

もちろん、全個体電池がリチウムイオン電池を駆逐するかについては、現時点では憶測の域でしかなく、先行きは不透明です。
実験の段階では高パフォーマンスでも、実用の段階になると意外と思わぬ弱点を抱えていたりすることもあります。
全個体電池搭載型の電気自動車の発売も2022年頃とされ、市場に出回るまでまだそれなりに時間があります。

しかしながら、現在主流のリチウムイオン電池に強力なライバルが出現したことは事実でしょう。
リチウムイオン電池がシェアを維持すれば、電気自動車の普及にあわせて、リチウムの主要生産国の経済が伸びる可能性が高い。
しかし、全個体電池がシェアを奪うことになれば、むしろこうした国々は現在のシェアを失い、国際競争力の相対的低下を余儀なくされるでしょう。


さいごに

経済波及効果の大きな自動車産業の再編に合わせて、面白い動きが続いています。

これから業界の覇権を巡る争いとともに、多くの統廃合が起こるでしょう。

リスクは高いですが、是非是非、一歩先の予測から利益を得たいものです。