Ossan's Oblige ~オッサンズ・オブリージュ~

文化とは次世代に向けた記録であり、愛の集積物である。

【高反発球】プロ野球のボールの反発率で景気調整?【ホームランが多い年は好景気?】

f:id:Illuminated29:20190606165841p:plain

次のような記事を目にしたことがあります。

「プロ野球の打者成績は経済動向と連動しやすく、政府が景気を上向かせたい時は、プロ野球に高反発球を導入することで打高投低に誘導する」

記事の中で紹介されていたのは、メジャーリーグの事例でした。

しかし、近年の日本プロ野球を振り返っても、思い当たる節がなくもありません。

1 日本プロ野球の打撃成績と日本経済の相関

例えば2013年以降、「統一球」が用いられた2011年~2012年から一転、打撃好調な選手が多く見えたのは気のせいでしょうか?

ウラジミール・バレンティン選手の歴代シーズン最多60本塁打
2013年
中田翔選手の好調(打率3割)
2013年
山田哲人選手、柳田悠岐選手、筒香嘉智選手の台頭
2013年以降

奇しくも、この時期はアベノミクスの施行期間と重なっています。


思えば、政府が強引にでも景気を上向かせなければならなかった世界金融危機(2007年)以降の時期、例年には珍しい打高が発揮されたことも事実です。

内川聖一選手の打率.378
2008年
村田修一選手の46本塁打
2008年
アレックス・ラミレス選手の49本塁打
2010年
西岡剛選手の打率.348
2010年


当然、成績を左右するのは、選手の実力です。

しかしながら、「飛ばない」統一球が導入された2011年に、球界がかつてない打低投高に見舞われたのは事実です。
例年に渡り3割30本をクリアしてきた小笠原道弘選手が5本塁打に終わり、栄華に終止符が打たれたのも2011年でした。
小笠原選手以外にも、多くの選手が不振にあえいでいます。

この年の教訓は、「野手成績は、ボールの反発度から多分に影響を受ける」という客観的事実です。

もし、ボールによって選手の成績をある程度コントロールできるのであれば、超法規的な措置によって、何らかの操作が実施されないとも言い切れません。


これについて、データはどのような見解を示しているのでしょうか?

プロ野球の成績と経済状況には、何らかの相関関係が確認できるのでしょうか?



2000年から2016年までの本塁打数の動向

次のグラフは、年度ごとの球界全体の本塁打数の推移です。

年代ごとの本塁打数の傾向

2013年以降、新しいスター選手の台頭が球界を賑わせ、プロ野球人気を活気づけています。
2015年の山田哲人選手(38本塁打)のように、突然のブレイクを果たした若手選手も少なくありません。
それでも、2013〜2016年の数字は、2000年〜2004年のホームランの量産具合には遠く及びません。


2000年に1571本だった本塁打数は、2004年に期間中ピークの2010本に到達。
年間2010本塁打は、1球団のオーダー平均で見た場合、1打者平均-約19本塁打のペースです。
この数字は、いかに2004年が「飛ぶボール」であったかを物語っています。

その後の本塁打数は、2004年の2010本をピークに2006年の1453本まで減少した後、2010年の1605本まで緩やかな右肩上がりの回復基調をつけます。

しかし統一球(違反球)が導入されたことをきっかけに、2011年、2012年と本塁打数が激減。
2011年、2012年と1,000本塁打を下回るシーズンが続き、2012年には881本まで暴落。
1球団のオーダー平均で見ると、2012年は1打者平均-約8本塁打
これは2004年の半分以下です。

2013年〜2016年は、「違反球」への反省から球質の改善が行われ、単年1,200〜1,400本塁打の間で安定的に推移します。


2000年~2016年までの動向をまとめます。

2000〜2004年1571〜2010本。高反発球のピーク期
2005〜2010年1453〜1747本。高反発の調整期
2011〜2012年1000本以下。統一球の導入による低反発化
2013〜2016年1217〜1361本。低反発化後の安定期

さて、この動向に日本経済との相関が認められるのでしょうか?


2000年から2016年までの日本経済の推移

次のグラフは、世界経済のネタ帳掲載の「日本の経済成長率の推移」です。


まずは、日本経済を振り返ってみましょう。

日本の2000年代は、ITバブルで始まりました。
アメリカ発の新しい技術の登場によって、次々と新興産業が勃興し、投資を呼び込みバブル景気を形成します。

さらに2001年にはアメリカで同時多発テロが起こり、中東への軍事侵攻が実現。
2002年以降のアメリカの景気回復をベースに、サブプライムバブルが水面下で進行し、のち2007年に破綻を迎えるバブル景気を形成します。
この影響を受けて、日本も好景気に沸きます。

ところが、2007年にサブプライムローン問題が発生。
米国は金融危機に突入し、この流れの中で起きた2008年のリーマンブラザーズの経営破綻がきっかけとなり、リーマンショックが発生。
日本も連鎖的な金融不安に巻き込まれ、不況に突入します。
世界の首脳が金融緩和を実施していく中、日本の民主党は金融緩和を避けたため不況が長期化します。

さらに2011年には東北地方で東日本大震災が発生。
都市の壊滅と、原子力発電所の崩壊から不安心理が高まり、日経株価は暴落。
長年の不況に続く震災の打撃が、「傾きかけの日本にとどめを刺した」かのように見えました。

ところが、政権交替が実現し、安倍新政権が発足。
首相は世界に向かって大幅な金融緩和を伴う「アベノミクス」による不況脱出プランを掲げます。
これが受け入れられ、世界から投資が殺到。
震災の被害は大きかったものの、堅実な内需経済を基盤とする日本経済は、今のところ通貨毀損を起こすことなく持ち直すことに成功しています。

まとめます。

2002年〜2006年アメリカの景気回復の恩恵
2007年〜2012年世界金融危機と民主党のデフレ政策。景気後退期
2013年〜2016年アベノミクス。景気回復期



日本のプロ野球の打撃成績と経済の傾向を分析してみます

f:id:Illuminated29:20170906203520p:plain:w400
f:id:Illuminated29:20170906203528p:plain:w400

2000~2016年期の日本経済の動向を見ると、2007~2012年の不況期間を例外として、概ね好調に推移してきたことが分かります。

一方、ホームラン数の推移は、2001年〜2004年にかけての急増期、2011年と2012年の激減期に特徴的な動きが確認できます。

もし、プロ野球が「プロ野球の打撃成績が社会情勢に適したムードを演出するために調整を受ける」という仮説が成り立つなら、ホームラン数が特異的な動き方をした2つの時期について社会情勢を確認する必要があります。

2001年〜2004年にかけての急増期
 小泉政権の発足期間と一致
2011年と2012年の激減期
 2011年の東日本大震災から2013年の「アベノミクス」の発効時期までと一致

「金融規制緩和」、「派遣法改正」など、急進改革によって日本の政治制度を大きく様変わりさせた小泉内閣は、2001年〜2006年まで日本の内閣を握った政権です。
この期間は、ホームラン数における「2001年〜2004年にかけての急増期」と重なっており、2001年のタフィ・ローズ、2002年のアレックス・カブレラ選手が立て続けにシーズン55本塁打を達成し、マスメディアを賑わせていた時期です。

また、「2011年と2012年の激減期」は、東日本大震災と原子力発電所の崩壊によって、破滅的な世論が蔓延っていた時期と重なっています。
当時の政権は、民主党でしたが、悲観的なムードの形成に一役買っていたことは間違い無いでしょう。
その翌年、安倍新政権による「アベノミクス」による株価暴騰を迎えると、悲観的な世論は打破されることになります。

アベノミクスの施行時期と重なる2013年~2016年の間は、プロ野球の本塁打数も回復し、概ね安定的に推移しています。(ただし、2010年以前に比べると少ない)
この時期は、大谷翔平選手の大ブレークや山田哲人選手、柳田悠岐選手のトリプルスリーなど、プロ野球にとって明るい話題でもちきりとなり、社会に対して明るいイメージを与えました。

こじつけに過ぎないが、それっぽい動きが確認できたことは事実

こうした印象は、データを無理やり結びつけた印象であり、「こじつけ」に過ぎません。

しかし、本塁打数が特異的な動きをした時期には、国内情勢的にも変異が認められたことは事実です。


2 米メジャーリーグのケース

日本の野球だけでは論拠に乏しいので、メジャーリーグのケースを見てみます。

アメリカはデータ重視社会なので、専用のウェブページがあり、データを調べることは難しくありませんでした。

トランプが政権についた2017年の動向について

結論から言うと、トランプ大統領が登場した2017年、明らかな高反発球化の動きが確認できます。
この大統領は、「アメリカファースト」を掲げ、アメリカ経済の復活を公約に政権の座に上り詰めた人物でした。
明るい社会ムードを必要とする大統領といえるでしょう。

データは、明らかに打高化の傾向を示しています。

f:id:Illuminated29:20170906203654p:plain
(https://www.baseball-reference.com/leagues/MLB/bat.shtml)

このHRという指標は、1試合あたりの平均本塁打数です。
1800年代まで遡れる同データベースの中で、2017年は、史上最高の平均本塁打数を記録したシーズンであったことが確認できます。
第2位の2000年でも、「1.17」と、1.2台に差し掛かるシーズンはこれまで1度もなかったのに、2017年は「1.27」と1.2台後半を突破してくるほどの増加傾向であったことを示しています。

実際の選手成績を見ても、ジャンカルロ・スタントン選手のシーズン59本塁打(前年までの最高本塁打数は37本)、2年目のアーロン・ジャッジ選手のシーズン52本塁打による台頭など例証は難しくありません。
日本の田中将大選手も地元メディアのインタビューにおいて「例年よりボールが飛ぶ気がする」といった内容の証言を語っています。


そして、この2017年という年は、経済政策を重視するトランプ大統領が登場した年と同年です。


筆者個人としては、プロ野球の「打高誘導陰謀論」に同意

これまで、データをみつつ日本とアメリカの野球の打撃傾向を政治と結びつけて分析してきました。

もちろん、打者の実力、成長、あるいは全体的な投手のコンディションなど、ホームラン数を決定する要因をボールの反発率だけに求めるのは難しい気もします。
解釈は個人に委ねられるでしょう。

とはいえ、調査の中で見えてきた、ホームラン数の変動が激しい時期と、国内情勢の激動期の奇妙な一致は、非常に印象深い経験でした。

アメリカの2017年における、トランプ大統領の登場と、1試合あたりの平均本塁打数の急増の一致を見ても、個人的には「少なくとも関係はあり」という結論に至っています。


ボールの反発率と経済動向の関係、信じるも信じないもあなた次第です。